すみれ色日記

宝塚について思うままに語ります

『凱旋門』のアンリ

 しつこく『凱旋門』でごめんなさい。
 でも時間が経った方がじわじわといろんなことが見えてくる気がし、自分の心の整理のためにも書こうと思います。



 ジョアンを愛し、そのあまり心が離れていくジョアンを撃ってしまうアンリ。
 狂気、といわれます。


 このアンリの演技は難しかったと思います。


 ジョアンを撃つ前のシーンでは、ラビックが怒って帰ったと泣いているジョアンを「行かないでくれ」(だったかな?)と抱きしめるシーンぐらいしか表現の場はありません。
 あとはジョアンが「アンリが私を撃つと言うの」「あの人はかんしゃくもちなの」などと言うぐらい。


 そしてアンリがジョアンを撃ってしまってラビックを呼びにきたとき、そんな最中に「撃つつもりはなかったんです!」とか、瀕死のジョアンを前に「二人の未来が奪われてはならない!」などと述べるなど、ようやくこの辺りで、ラビックにも観客にもアンリのちょっと過激な自己中心的な性格が見えるようになります。


 いやぁ、これは彩風さんも難しかったんじゃないかしら。
 最初から狂気を前面に出し過ぎると、なんでジョアンはこんな男性に魅かれたのだろう、となってしまうし、一見普通の青年がこのような狂気を秘めている、というところがこのアンリのポイントなんだと思うので、やはり最初はまったくの好青年でいいのだと思います。


 撃つより前のシーンの一つのポイントは、ラビックが帰って泣いているジョアンを見て、脱いだ上着をもう一度着てジョアンに向かったときかしら。
 あのときの彩風さんの表情がゾクッとさせられ、あの彩風さんのアンリだったら、その後の展開に納得です。


 この少ない出番の中では、彩風さんはよく好演していたんじゃないかな、と思いますが、ただ、表現のためにも、もう少し出番をあげたかったです。

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